心臓のための7つの健康習慣は、肝臓も守る?最新研究が示す意外な関係
📄 Association of Life's Simple 7 with metabolic-associated steatotic liver disease and non-invasive fibrosis markers.
✍️ Hofer, H., Wernly, S., Semmler, G., Flamm, M., Völkerer, A., Singhartinger, F., Jung, C., Erkens, R., Ausserwinkler, M., Aigner, E., Datz, C., Wernly, B.
📅 論文公開: 2026年1月
3つのポイント
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心臓の健康状態を測るための7つの生活習慣指標(Life's Simple 7)が、脂肪肝のリスクとも強く関連していることが示されました。
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この指標のスコアが良いグループでは脂肪肝の有病率が16%だったのに対し、スコアが悪いグループでは82%にものぼりました。
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心臓と肝臓の健康は密接に関わっており、生活習慣の改善が両方の臓器を守ることにつながる可能性を示唆しています。
論文プロフィール
- 著者名 / 発表年 / 掲載誌: Hofer, H. ら / 2026年 / openhrt
- 調査対象: ザルツブルク大腸がん予防イニシアチブ(Sakkopi)の参加者 3,204名
- 調査内容: 米国心臓協会が提唱する健康指標「Life’s Simple 7」と、代謝関連脂肪性肝疾患(MASLD、いわゆる脂肪肝)および肝臓の線維化との関連を調査しました。
エディターズ・ノート
「脂肪肝」と聞くと、お酒の飲み過ぎが原因と思われがちですが、実は飲酒習慣のない人でもなる「代謝関連脂肪性肝疾患(MASLD)」が世界的に増えています。
今回は、もともと心臓の健康のために作られた7つの生活習慣指標が、肝臓の健康状態とも深く関わっていることを明らかにした研究をご紹介します。心臓と肝臓、一見すると遠い関係に思える二つの臓器の、意外なつながりを見ていきましょう。
実験デザイン
この研究は、オーストリアで行われている健康調査の参加者3,204名のデータを分析したものです。
研究チームは、米国心臓協会が定める「Life’s Simple 7(LS7)」という7つの指標を使って、参加者の生活習慣をスコア化しました。 【Life’s Simple 7 の7項目】
- 喫煙: 現在吸っているか
- BMI: 体格指数
- 身体活動: 運動習慣
- 食事: 健康的な食生活
- 血圧: 正常範囲か
- 総コレステロール: 正常範囲か
- 空腹時血糖値: 正常範囲か
🔍 Life's Simple 7 のスコアはどう決まる?
LS7では、7つの各項目について「理想的」「中間」「不良」の3段階で評価し、それぞれに2点、1点、0点のスコアをつけます。7項目すべての合計点(最大14点)で、総合的な心血管健康度を評価します。
例えば、「理想的」な状態とは以下のようなものです。
- 身体活動: 中強度の運動を週150分以上
- 食事: 野菜や果物、全粒穀物などを豊富に摂る
- 血圧: 120/80 mmHg未満
これらの指標を複数満たしているほど、スコアが高くなります。
そして、このLS7スコアと、超音波検査で診断された脂肪肝(MASLD)の有病率との関連を分析しました。
その結果、LS7のスコアと脂肪肝のリスクには、非常に強い関連が見られました。LS7のスコアが良い(理想的)グループでは脂肪肝の人の割合はわずか16%でしたが、スコアが悪いグループでは82%という高い割合で脂肪肝が見つかったのです。
| 項目 | 脂肪肝の人の割合 (%) |
|---|---|
| LS7スコアが悪い (0-4点) | 82 |
| LS7スコアが中間 (5-9点) | 47 |
| LS7スコアが良い (10-14点) | 16 |
この結果は、年齢、性別、社会経済的地位といった他の要因の影響を取り除いても、統計的に有意なものでした。心臓のための健康習慣が、肝臓の健康とも密接に関係していることが強く示唆されます。
日常への活かし方
今回の研究から、「心臓に良い生活は、肝臓にも良い」という、シンプルで力強いメッセージが浮かび上がってきます。肝臓も心臓も「沈黙の臓器」と呼ばれ、症状が出にくいからこそ、日々の生活習慣による予防がとても大切です。
この知見を、私たちの生活にどう活かせるでしょうか。
1. まずは「7つのうち1つ」から意識してみる
7つの項目すべてを完璧にこなすのは大変です。まずは、ご自身の生活を振り返り、一番始めやすそうなことから取り組んでみてはいかがでしょうか。
- エレベーターを階段に変えてみる(身体活動)
- 夕食に野菜の小鉢を1品追加する(食事)
- 就寝前のスマホ時間を15分減らして、睡眠の質を上げる(血圧や血糖にも間接的に影響)
小さな一歩が、心臓と肝臓、両方の健康を守る大きな変化につながるかもしれません。
🔍 「代謝関連脂肪性肝疾患(MASLD)」って何?
MASLDは、以前は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれていました。アルコールが原因ではない、肥満や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病に関連して肝臓に脂肪がたまる病気です。
食生活の欧米化などを背景に患者数は世界的に増加しており、日本でも成人の3〜4人に1人が罹患していると推定されています。放置すると肝硬変や肝がんに進行する可能性もあるため、早期の対策が重要です。
2. 健康診断の結果を「自分ごと」として見直す
LS7の項目のうち、血圧、コレステロール、血糖値は健康診断で測定される項目です。これらの数値は、体の状態を客観的に教えてくれる大切な バイオマーカー バイオマーカー 血液検査値や遺伝子情報など、健康状態や疾患リスクを客観的に測定可能な生物学的指標。 (体の中の目印)です。
「基準値より少し高いだけだから…」と見過ごさずに、ご自身の数値をしっかり把握しましょう。それが、生活習慣を見直すきっかけになります。
ただし、今回の研究は特定の集団における「関連」を示したものであり、LS7を改善すれば必ず脂肪肝が治るという「因果関係」を証明したものではありません。また、この結果がすべての人に当てはまるとは限らないことにも注意が必要です。
読後感
「心臓」と「肝臓」という、体の中の異なる場所にある二つの臓器が、同じ生活習慣によって影響を受けているというのは、非常に興味深いですね。私たちの体は、すべてがつながっている一つのシステムなのだと改めて感じさせられます。
あなたの日々の生活の中で、心臓と肝臓の両方をいたわるために、今日から少しだけ変えてみようと思えることは何でしょうか?