And Well 研究所
栄養学

「発酵ホエイプロテイン」が高齢者の筋力低下を防ぐ? 最新研究が示す可能性

📄 Fermented Whey Protein Supplement Slows the Progression of Frailty and Sarcopenia Among Older Korean Adults: A Randomized Blinded Trial.

✍️ Lim, HS, Jung, DH, Kim, HY, Lee, JW, Kim, YS, Shin, H

📅 論文公開: 2026年1月

高齢者 フレイル サルコペニア タンパク質 筋力

3つのポイント

  1. 1

    高齢になると気になる筋力や活力の衰え(フレイル・サルコペニア)対策として、「発酵ホエイプロテイン」の効果を検証しました。

  2. 2

    10週間の摂取で、偽の粉末(プラセボ)を飲んだグループに比べ、握力や歩く速さなどの身体機能が有意に改善しました。

  3. 3

    この結果は、日々の食事に発酵ホエイプロテインを加えることが、健康寿命を延ばすための一つの選択肢になる可能性を示しています。

論文プロフィール

  • 著者・発表年: Lim, HS ら、2026年
  • 調査対象: 65歳以上の韓国人高齢者 45名
  • 調査内容: 10週間にわたり、乳酸菌で発酵させたホエイプロテインのサプリメントを摂取することが、加齢に伴う筋力や身体機能の低下(フレイルやサルコペニア)にどのような影響を与えるかを検証しました。

エディターズ・ノート

人生100年時代、いつまでも自分の足で元気に歩きたい、というのは多くの方の願いではないでしょうか。 年齢とともに筋力が衰えたり、心身の活力が低下したりする「フレイル」や「サルコペニア」は、そんな願いを脅かす大きな課題です。

今回は、その対策の一つとして注目される「発酵ホエイプロテイン」の効果を検証した最新の研究をご紹介します。日々の栄養摂取のヒントが見つかるかもしれません。

実験デザイン

この研究は、科学的な信頼性が高いとされる ランダム化比較試験 という方法で行われました。

参加者である65歳以上の高齢者45名を、くじ引きのようにランダムに2つのグループに分け、10週間、それぞれ異なる粉末を毎日摂取してもらいました。

  • 介入群 (23名): 1日に20gの「発酵ホエイプロテイン」を摂取
  • 対照群 (22名): 見た目や味がそっくりな「偽の粉末( プラセボ )」を摂取

そして、10週間後に握力や歩行速度、身体機能の総合スコア(SPPB)などがどれだけ変化したかを比較しました。 その結果、発酵ホエイプロテインを摂取したグループの方が、身体機能の様々な面でより大きな改善が見られました。

両グループの身体機能スコア改善度の比較(概念図) 0 14 28 42 56 70 身体機能の改善度 30 プラセボ群 70 発酵プロテイン群
両グループの身体機能スコア改善度の比較(概念図)
項目 身体機能の改善度
プラセボ群 30
発酵プロテイン群 70
両グループの身体機能スコア改善度の比較(概念図)
🔍 「フレイル」と「サルコペニア」とは?

どちらも加齢に伴う心身の変化を指す言葉ですが、少し意味合いが異なります。

  • サルコペニア: ギリシャ語で「筋肉(サルコ)の減少(ペニア)」を意味します。主に「筋肉量と筋力の低下」に焦点を当てた状態です。転倒や骨折のリスクが高まります。
  • フレイル: 「虚弱」を意味する英語で、より広い概念です。筋力低下に加えて、疲れやすい、歩くのが遅くなる、体重が減る、活動量が減るなど、心身の様々な機能が低下し、ストレスに対する回復力が弱くなった状態を指します。

サルコペニアはフレイルの大きな原因の一つと考えられており、どちらも早期に気づき、対策することが大切です。

日常への活かし方

今回の研究から、発酵ホエイプロテインの摂取が、高齢期における筋力や身体機能の維持に役立つ可能性が見えてきました。 この結果を、私たちの日常生活にどう活かせるでしょうか。

1. タンパク質を意識した食生活を

特に高齢期は、筋肉の材料となるタンパク質が不足しがちです。 この研究では1日20gのプロテインを追加していましたが、まずは日々の食事からタンパク質を十分に摂ることを意識してみましょう。

  • 肉・魚: 手のひらサイズの切り身を目安に
  • 卵: 1日1〜2個
  • 大豆製品: 豆腐や納豆、豆乳などを毎日の食卓に
  • 乳製品: 牛乳やヨーグルトも手軽なタンパク源です

一度にたくさん食べるのが難しい場合は、3食に分けて少しずつ摂るのがおすすめです。

🔍 なぜ「発酵」ホエイプロテインなのか?

この研究では、一般的なホエイプロテインではなく「乳酸菌発酵」させたものが使われました。 発酵させることのメリットとして、以下のような可能性が考えられています。

  • 消化・吸収の向上: タンパク質がアミノ酸やペプチドといった、より小さな単位に分解されるため、体内での消化・吸収がスムーズになる可能性があります。胃腸の働きが弱りがちな高齢者にとっては、特にメリットが大きいかもしれません。
  • 機能性成分の生成: 発酵の過程で、体に良い影響を与える新たな成分(バイオアクティブペプチドなど)が生まれる可能性も報告されています。

ただし、今回の研究だけで「発酵でなければ効果がない」と断定はできません。今後のさらなる研究が待たれます。

2. サプリメントは賢く、補助的に

食事だけで十分なタンパク質を摂るのが難しい場合は、プロテインサプリメントを利用するのも一つの手です。 ただし、サプリメントはあくまで食事の「補助」と捉えましょう。まずはバランスの取れた食事を基本に、不足分を補うという考え方が大切です。

利用を検討する際は、かかりつけの医師や管理栄養士に相談することをおすすめします。特に腎臓に持病がある方は注意が必要です。


もちろん、この研究結果がすべての人に当てはまるとは限りません。 今回は45名という小規模な研究であり、対象も韓国人の高齢者に限定されています。また、10週間という比較的短い期間での結果であることにも注意が必要です。

それでも、高齢期の健康を維持するために「タンパク質の摂取」が重要であるという、これまでの知見を改めて裏付ける貴重なデータと言えるでしょう。

読後感

年齢を重ねても、自分らしく活動的な毎日を送るために、栄養はとても大切な要素です。

ご自身の食生活を振り返ってみて、毎日のタンパク質は足りていると感じますか? 明日から少しだけ意識してみたい食事の工夫は、何か見つかりましたか?