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予防医学

胃がんリスクを下げるピロリ菌除菌の新常識とは? 日本の最新ガイドライン2024を解説

📄 Guidelines for the management of Helicobacter pylori infection in Japan: 2024 revised edition.

✍️ Isomoto, H., Shimoyama, T., Ito, M.

📅 論文公開: 2026年1月

ピロリ菌 胃がん 除菌治療 予防医学 ガイドライン

3つのポイント

  1. 1

    ピロリ菌に感染している人は、症状がなくても全員が除菌治療の対象となることが改めて推奨されました。

  2. 2

    除菌治療では、従来の薬よりも効果の高い新しいタイプの薬(P-CAB)の使用が推奨されるようになりました。

  3. 3

    胃がんを予防するためには、できるだけ若い年齢でピロリ菌を除菌することが重要であると強調されています。

論文プロフィール

  • 著者名 / 発表年 / 掲載誌: Isomoto, H. ら / 2026年 / Journal of Gastroenterology
  • 調査対象: 日本のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染者に関する最新の知見
  • 調査内容: 日本ヘリコバクター学会が発表した、ピロリ菌感染症の診断と治療に関する2024年版の最新ガイドラインの要点解説

エディターズ・ノート

「ピロリ菌の検査、一度は受けた方がいいらしい」 そんな話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

日本人の胃がんの主な原因とされるピロリ菌について、専門家による最新の治療ガイドラインが発表されました。 「全員除菌すべき?」「どんな治療法があるの?」といった疑問に答える、私たちの健康に直結する大切な情報です。ポイントをわかりやすく解説します。

ガイドライン作成のプロセス

この論文は、特定の患者さんを対象とした新しい実験を行ったものではありません。 これまでに報告された多くの質の高い研究結果を、日本の専門家が集まって総合的に評価し、現在の最善の治療方針をまとめた「診療ガイドライン」です。

つまり、たくさんの研究から得られた「確かな情報(エビデンス)」を基に、日本の医療現場で使うための「教科書」をアップデートした、というイメージです。

今回の改訂では、除菌治療で使われるお薬の推奨内容に大きな更新がありました。 従来の薬(PPI)よりも、新しいタイプの胃酸を抑える薬(P-CAB)を使った治療法の方が、除菌の成功率が高いことが多くの研究で示されたため、第一選択として推奨されることになりました。

一次除菌における治療法の効果のイメージ(概念図) 0 18 36 54 72 90 除菌成功率のイメージ 75 従来の薬(PPI)ベースの治療 90 新しい薬(P-CAB)ベースの 治療
一次除菌における治療法の効果のイメージ(概念図)
項目 除菌成功率のイメージ
従来の薬(PPI)ベースの治療 75
新しい薬(P-CAB)ベースの治療 90
一次除菌における治療法の効果のイメージ(概念図)
🔍 ピロリ菌って、そもそもどんな菌?

ヘリコバクター・ピロリ(通称ピロリ菌)は、人の胃の中に生息できる特殊な細菌です。 多くは幼少期に感染し、一度感染すると自然にいなくなることは稀です。

ピロリ菌は胃の粘膜に炎症を繰り返し起こし(慢性胃炎)、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、そして最も深刻なものとして胃がんの原因になることがわかっています。 ただし、感染した人すべてが病気になるわけではありません。

🔍 新しい薬「P-CAB」は何が違うの?

ピロリ菌の除菌治療では、2種類の抗生物質と、胃酸の分泌を抑える薬を一緒に服用します。 胃酸をしっかり抑えることで、抗生物質の効果が高まるためです。

  • PPI(プロトンポンプ阻害薬): 従来から使われている、胃酸を抑える薬。
  • P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー): 最近登場した、より強力かつ速やかに胃酸を抑える効果が期待できる薬。

今回のガイドラインでは、このP-CABを使った方が除菌の成功率が高いという研究結果が多く集まったため、推奨度が上がりました。

日常への活かし方

この最新ガイドラインから、私たちが日々の健康管理に活かせるポイントを3つご紹介します。

1. 「自分は大丈夫」と思わず、一度は検査を検討する

今回のガイドラインでも、「ピロリ菌に感染している人は全員が除菌治療の対象」という基本方針は変わりませんでした。 特に症状がなくても、胃の中では慢性的な炎症が続いている可能性があります。

もし一度もピロリ菌の検査を受けたことがなければ、お住まいの自治体の検診制度を調べたり、かかりつけ医に相談したりすることを検討してみましょう。

2. 若いうちの検査・除菌が、将来の胃がん予防につながる

ガイドラインでは、胃がんを予防するためには「より若年での除菌が推奨される」と明記されました。 これは、ピロリ菌による胃の粘膜のダメージ(萎縮)が進行する前に除菌することで、胃がんのリスクをより効果的に下げられるためです。

中高生など、若い世代に対する最適な検査や治療法についても言及されており、将来の健康を守る上で早期の対策が重要視されています。


3. 除菌後も定期的な胃のチェックを忘れずに

ピロリ菌の除菌に成功すると、胃がんになるリスクは大幅に下がることがわかっています。 しかし、残念ながらリスクがゼロになるわけではありません。特に、すでに胃の粘膜の萎縮が進んでいる場合は注意が必要です。

除菌が成功した後も、定期的に胃カメラなどの検診を受けることが、万が一の胃がんの早期発見につながります。

🔍 この研究の注意点

このガイドラインは、日本の医療データや状況に基づいて作成されたものです。そのため、推奨される薬の種類や治療法は、海外のガイドラインとは異なる場合があります。また、個人の健康状態やアレルギー歴などによって最適な治療法は変わるため、実際の治療については必ず医師と相談することが大切です。

読後感

胃がんの大きな原因の一つがピロリ菌の感染であるとわかってから、日本の胃がん患者数は大きく減少しました。 今回のガイドライン改訂は、その流れをさらに加速させるための重要な一歩と言えるかもしれません。

あなたご自身や、あなたの大切な家族の健康のために、ピロリ菌について今日からできることは何だと思いますか?