And Well 研究所
予防医学

ガーナ都市部の成人7,096名を対象とした高血圧管理に関する知識と生活習慣の実態調査

📄 Assessing knowledge and lifestyle behaviours for hypertension management among adults in urban Ghana: a cross-sectional study

✍️ Ojangba, T., Boamah, S., Miao, Y., Zhanlei, S., Dormatey, R., Zhu, D., Dedi, R., Dong, W., Zhao, Q., Hua, B.

📅 論文公開: 2026年1月

高血圧 生活習慣 予防医学 ヘルスリテラシー BMI

3つのポイント

  1. 1

    ガーナ都市部の成人7,096名を調査した結果、年齢とBMI(体格指数)が血圧の上昇と有意に関連していました。

  2. 2

    女性ではステージ2の高血圧が多く、男性では27〜53歳の年齢層で高血圧前段階の割合が高いことがわかりました。

  3. 3

    高血圧の知識や生活習慣の改善が、血圧管理において重要な役割を果たす可能性が示されました。

論文プロフィール

  • 著者: Ojangba, T. ら10名
  • 発表年: 2026年
  • 掲載誌: Primary Health Care Research & Development(Cambridge University Press)
  • 調査対象: ガーナ都市部4地域に住む18〜67歳の成人7,096名(女性63.85%、平均年齢37.27歳)
  • 調査内容: 高血圧に関する知識レベル、生活習慣行動、社会人口学的要因との関連を評価する横断研究

エディターズ・ノート

高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれ、自覚症状がないまま心臓病や脳卒中のリスクを高めます。日本でも約4,300万人が高血圧と推定されていますが、「自分の血圧に関心を持ち、生活習慣を見直す」ことの重要性は国を問いません。今回は、ガーナ都市部で大規模に行われた調査から、高血圧と日常の生活習慣がどのように結びついているかを読み解きます。

実験デザイン

本研究は、2023年8月から2024年9月にかけてガーナの4つの都市部地域で実施された横断的調査研究です。

調査の概要

  • 対象者: 18〜67歳の成人7,096名
  • サンプリング方法: 層化便宜抽出法(地域ごとに層を分け、その中から参加者を募る方法)
  • 測定項目: 血圧測定、BMI(体格指数)、高血圧に関する知識、生活習慣行動(食事・運動・喫煙・飲酒など)、社会人口学的情報
参加者の性別構成(論文データより) 0 13 26 38 51 64 割合(%) 63.85 女性 36.15 男性
参加者の性別構成(論文データより)
項目 割合(%)
女性 63.85
男性 36.15
参加者の性別構成(論文データより)

主な分析結果

  • 年齢とBMIの影響: 年齢とBMI(体重[kg]÷身長[m]²で計算される体格の指標)は、収縮期血圧(上の血圧)と拡張期血圧(下の血圧)の両方と統計的に有意な正の相関を示しました。つまり、年齢が高いほど、またBMIが大きいほど、血圧が高くなる傾向がありました。
  • 性別による違い: 女性ではステージ2(より重度の)高血圧の割合が高く、男性では27〜53歳の働き盛りの年代で高血圧前段階(正常よりやや高いが高血圧の診断基準には達していない状態)が目立ちました。
  • 婚姻状況: 参加者の97.66%が既婚者であり、社会的背景の偏りが見られました。
🔍 横断研究の特徴と限界

本研究は コホート研究 のように対象者を長期間追跡する手法ではなく、ある一時点でのデータを収集する「横断研究」です。

横断研究では以下の点に注意が必要です。

  • 因果関係は証明できない: 「BMIが高い → 血圧が上がる」という因果の方向を確定することはできず、あくまで「関連がある」という相関を示すにとどまります。
  • 便宜抽出法の制約: 病院やコミュニティの集会など特定の場所で参加者を募っているため、ガーナ都市部全体を完全に代表しているとは限りません。
  • 一方で、7,096名という大規模なサンプルサイズは、傾向を把握するうえで十分な統計的検出力を持っています。
🔍 高血圧のステージ分類とは

血圧は一般的に以下のように分類されます。

  • 正常血圧: 収縮期120 mmHg未満 かつ 拡張期80 mmHg未満
  • 高血圧前段階(プレハイパーテンション): 収縮期120〜139 mmHg または 拡張期80〜89 mmHg
  • ステージ1高血圧: 収縮期140〜159 mmHg または 拡張期90〜99 mmHg
  • ステージ2高血圧: 収縮期160 mmHg以上 または 拡張期100 mmHg以上

本研究で男性に多かった「高血圧前段階」は、まだ治療が必要とされない段階ですが、生活習慣の見直しが推奨される重要な時期です。

日常への活かし方

この研究から、私たちの日常生活に活かせるヒントを3つご紹介します。

1. 体重管理を意識する

BMIと血圧の間に明確な正の相関が確認されました。急激なダイエットではなく、日々の食事で塩分や脂質を少し控えめにする、野菜を一品追加するなど、無理のない範囲で体重を適正に保つことが血圧管理の第一歩です。

2. 年齢に応じた健康チェックを習慣にする

年齢が上がるほど血圧は高くなる傾向があります。特に男性は30代〜50代で高血圧前段階のリスクが高まることが示されました。家庭用の血圧計で朝晩の測定を習慣にすると、自分の血圧の傾向を早期に把握できます。

3. 高血圧の知識を「家族で共有する」

本研究では、高血圧に関する知識レベルが生活習慣の改善行動と関連していることが示唆されています。「塩分の摂りすぎが血圧を上げる」「適度な運動が血圧を下げる」といった基本知識を、家族やパートナーと共有することで、家庭全体で健康的な環境を作りやすくなります。

🔍 日本の高血圧事情との比較

日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2019」によると、日本でも高血圧は最も多い生活習慣病の一つです。

  • 日本では食塩摂取量の多さが高血圧の主要因とされており、1日6g未満の減塩が推奨されています。
  • ガーナの研究と同様に、日本でもBMIと血圧の関連は広く認められています。
  • 文化や食習慣は異なりますが、「体重管理」「減塩」「定期的な血圧測定」という基本的な対策は世界共通です。

今回の研究結果がそのまま日本人に当てはまるとは限りませんが、生活習慣と血圧の関係という点では、私たちにも通じる示唆を含んでいます。

注意: この研究はガーナ都市部の成人を対象としたものであり、結果がすべての国や人口集団にそのまま当てはまるとは限りません。また横断研究であるため、因果関係の証明ではなく、あくまで関連性を示したものです。

読後感

高血圧は、多くの場合「痛くもかゆくもない」まま進行します。だからこそ、自分の血圧を知り、日々の生活習慣に少しだけ注意を向けることが大切です。

あなたは最後に血圧を測ったのはいつでしょうか? もし家に血圧計がなければ、ドラッグストアや健康診断の機会を使って、まず「今の自分の数値」を知ることから始めてみませんか。