And Well 研究所
栄養学

動物性食品に多い「ビタミンK2」、男性の活力を支える可能性?ラット研究からの新発見

📄 Effect of Vitamin K Supplementation on Testosterone Production in a Rat Model of Late-Onset Hypogonadism.

✍️ Murakami, R., Ohsaki, Y., Ito, H., Shirakawa, H.

📅 論文公開: 2026年1月

ビタミンK テストステロン 男性ホルモン アンチエイジング 栄養学

3つのポイント

  1. 1

    加齢とともに低下する男性ホルモン(テストステロン)について、ビタミンKの一種「メナキノン-4(MK-4)」がその減少を抑える可能性がラット実験で示されました。

  2. 2

    同じビタミンKでも、緑黄色野菜に多い「ビタミンK1」には顕著な効果が見られず、動物性食品や発酵食品に多いMK-4特有の働きが示唆されました。

  3. 3

    MK-4は、精巣でテストステロンが作られる過程の「スイッチ」をオンにすることで、その産生を直接的に促している可能性が考えられます。

論文プロフィール

  • 著者名 / 発表年 / 掲載誌: Murakami, R. ら / 2026年 / Foods
  • 調査対象: 加齢によるテストステロン低下を人為的に再現した雄ラット
  • 調査内容: ビタミンKの中でも種類の異なる「ビタミンK1」と「メナキノン-4(MK-4)」を4週間与え、テストステロンの量にどのような影響があるかを比較検証。

エディターズ・ノート

「男性の更年期」という言葉を耳にする機会が増えました。年齢とともに訪れる心身の変化に、食事がどう関わるのかは多くの方の関心事ではないでしょうか。

今回は、ビタミンの中でも少しマニアックな「ビタミンK」に着目した研究をご紹介します。特に、ビタミンKの「種類」によって働きが異なる可能性を示した点が非常に興味深く、私たちの食生活を考える上で新しい視点を与えてくれます。

実験デザイン

この研究では、薬を使って加齢によるテストステロンの低下状態を再現したラットを、次の3つのグループに分けて4週間観察しました。

  1. 対照グループ: 普通の餌を食べる
  2. ビタミンK1 グループ: ビタミンK1を添加した餌を食べる
  3. メナキノン-4 (MK-4) グループ: MK-4を添加した餌を食べる

その結果、MK-4を摂取したグループでのみ、テストステロン量の低下が明らかに抑制されることが分かりました。一方で、ビタミンK1を摂取したグループでは、対照グループと比べて大きな違いは見られませんでした。

各グループのテストステロン量の比較(概念図) 0 16 32 48 64 80 テストステロン量(相対値) 40 対照 45 ビタミンK1 80 メナキノン-4 (MK-4)
各グループのテストステロン量の比較(概念図)
項目 テストステロン量(相対値)
対照 40
ビタミンK1 45
メナキノン-4 (MK-4) 80
各グループのテストステロン量の比較(概念図)

この結果から、ビタミンKの中でも特に「MK-4」が、テストステロンの産生に重要な役割を果たしている可能性が示唆されます。

🔍 「ビタミンK1」と「K2(MK-4)」は何が違うの?

ビタミンKは、実は一つの物質ではなく、似た構造を持つグループの総称です。主に2つのタイプに分けられます。

  • ビタミンK1(フィロキノン): 主にほうれん草や小松菜、ブロッコリーなどの緑黄色野菜に含まれます。血液を固める働き(血液凝固)に不可欠なビタミンとして知られています。
  • ビタミンK2(メナキノン): 納豆などの発酵食品や、チーズ、バター、卵黄、肉類といった動物性食品に多く含まれます。MK-4やMK-7など、さらにいくつかの種類に分かれます。骨の健康維持や、血管の石灰化を防ぐ働きなどが注目されています。

今回の研究は、これまであまり知られていなかった「テストステロン産生」という新しい役割に、ビタミンK2の一種であるMK-4が関わっている可能性を示した点で画期的です。

日常への活かし方

今回の研究結果は非常に興味深いものですが、いくつか心に留めておきたい点があります。

第一に、これはラットを用いた動物実験であり、人間にそのまま当てはまるとは限りません。今後のさらなる研究が待たれます。 また、この研究は特定のビタミンKをサプリメントで補給した場合の効果を見たものであり、安易なサプリメントの利用を推奨するものではありません。

これらのことを踏まえた上で、私たちの日常に活かせるヒントを考えてみましょう。

1. 食材の多様性を意識してみる

今回の研究は、特定の栄養素だけをたくさん摂るのではなく、多様な食材から様々な種類の栄養素を摂ることの大切さを教えてくれます。

ビタミンK1が豊富な緑黄色野菜はもちろん重要ですが、それに加えて、ビタミンK2(MK-4)が含まれる以下のような食品も、バランス良く食事に取り入れてみてはいかがでしょうか。

  • 発酵食品: 納豆、チーズ
  • 動物性食品: 卵黄、バター、鶏肉や牛肉のレバー
🔍 テストステロンは男性だけのもの?

テストステロンは「男性ホルモン」として知られていますが、実は女性の体内でも作られており、心身の健康に重要な役割を果たしています。

男女ともに、テストステロンは

  • 筋肉や骨の維持
  • やる気や決断力といった精神的な活力
  • 記憶力などの認知機能

などに関わっています。加齢とともにテストステロンが低下すると、疲れやすくなったり、気分が落ち込みやすくなったりすることがあります。性別に関わらず、活力ある毎日を送る上で大切なホルモンなのです。

2. ビタミンKは「油」と相性抜群

ビタミンKは、油に溶けやすい「脂溶性ビタミン」です。そのため、油を使った調理法や、脂質を含む食材と一緒に摂ることで、体内への吸収率が高まります。

例えば、ほうれん草を食べるなら、おひたしだけでなく「バターソテー」にしてみる。そんな少しの工夫で、栄養をより効率的に摂ることができるかもしれません。

読後感

今回の研究は、まだまだ基礎的な段階ですが、「どの食品にどんな種類の栄養素が含まれているのか」を知ることの面白さを感じさせてくれます。

あなたの日々の食卓に、ビタミンKが豊富な食材はどのくらい登場しているでしょうか? まずはご自身の食事をそっと振り返ることから、始めてみるのはいかがでしょうか。