運動習慣、どうすれば続く? 男性向けプログラム参加者の声から見えた「続けるヒント」
📄 Exploring how men's physical activity behaviour changes during and after the Australian Fans-In-Training (Aussie-FIT) program: A qualitative study using the theoretical domains framework.
✍️ Smith, B.J., McDonald, M.D., McVeigh, J., Kwasnicka, D., Riddell, H., Maiorana, A., Brickley, B., Pavey, T., Quested, E.
📅 論文公開: 2026年1月
3つのポイント
- 1
男性が運動を始めるきっかけとして、スポーツを通じた楽しさの再発見や仲間とのつながりが重要です。
- 2
運動を習慣化するためには、日常生活に組み込む工夫(自己調整)と、周囲からのサポートが鍵となります。
- 3
プログラム終了後も運動を続けるには、次の目標設定や継続的なつながりといった移行期の支援が課題になることが示唆されました。
論文プロフィール
- 著者名 / 発表年 / 掲載誌: Smith, B.J. ら / 2026年 / British Journal of Health Psychology
- 調査対象: オーストラリアの男性向け健康プログラム「Aussie-FIT」に参加した男性10名(平均年齢58.2歳)
- 調査内容: 12週間のプログラム終了から3ヶ月後にインタビューを行い、運動習慣がどのように変化し、何がその変化を支え、また妨げたのかを質的に調査しました。
エディターズ・ノート
「今年こそ運動を始めよう!」と決意したものの、気づけば三日坊主…という経験は、多くの方にあるのではないでしょうか。
今回ご紹介するのは、運動が「続かない」のはなぜか、そして「続ける」ためには何が必要かを、プログラム参加者のリアルな声から探った研究です。
意志の力だけに頼るのではない、習慣化のヒントが隠されているかもしれません。
実験デザイン
この研究は、数値データで効果を測る「量的研究」とは異なり、個人の体験や語りに耳を傾ける「質的研究」というアプローチをとっています。
研究チームは、12週間の運動プログラムを終えた男性10名に対し、一人ひとり詳細なインタビューを実施しました。インタビューでは、プログラム中や終了後に、運動に対する考え方や行動がどう変わったか、何がモチベーションになったか、どんな困難があったかなどが尋ねられました。
そして、集められた語りのデータを分析し、運動習慣の維持に関わる共通のテーマを抽出しました。
🔍 「質的研究」ってどんなもの?
研究には大きく分けて、数値を扱う「量的研究」と、言葉や文脈を扱う「質的研究」があります。
- 量的研究: アンケート調査や測定によって「何人が」「どのくらい」といった量を明らかにします。例えば、「プログラム参加者のうち80%の体重が減少した」といった結果を示します。
- 質的研究: インタビューや観察を通して、「なぜ」「どのように」といったプロセスや背景を深く理解しようとします。今回の研究のように、「なぜ運動を続けられたのか、その人にとってどんな意味があったのか」を解き明かすのに適しています。
少人数の深い洞察から、多くの人に共通する課題や成功の鍵を探るのが、質的研究の魅力です。
日常への活かし方
この研究から見えてきた「運動を続けるヒント」を、私たちの日常生活に活かせる形で3つご紹介します。
1. 「義務」から「楽しみ」へ変換する
研究に参加した多くの男性が、運動を再開する大きなきっかけとして「楽しさの再発見」を挙げていました。特に、好きなスポーツ(この研究ではフットボール)を通じて、昔の情熱を思い出したり、仲間と体を動かす喜びを感じたりしたことが、強い動機付けになっていたようです。
もしあなたが「健康のために運動しなきゃ」と義務感で取り組んでいるなら、一度立ち止まって「自分が本当に楽しいと思える活動は何か?」を考えてみるのが良いかもしれません。
- 黙々と走るのが苦手なら、ダンス教室やフットサルに参加してみる。
- 仲間と一緒の方が頑張れるなら、友人や家族を誘ってウォーキングを始めてみる。
「やらなければ」を「やりたい」に変えることが、習慣化への第一歩です。
2. 「頑張り」を「仕組み」で支える
運動が習慣になった人たちは、それを「第二の天性」、つまり生活の一部として自然に行えるようになっていました。
これは根性論ではなく、生活の中に運動を組み込む「仕組み」を作っていたからです。
- 通勤時に一駅手前で降りて歩く
- 歯磨きをしながらスクワットをする
- 昼休みに必ず5分だけ散歩する
このように、日常の決まった行動とセットにしたり、小さな機会を見つけて実行したりする「自己調整」のスキルが、習慣化の鍵を握っていました。
また、家族や友人からの励ましや、一緒に活動する仲間がいること(社会的サポート)も、行動を後押しする重要な要素として挙げられています。
🔍 行動を後押しする「社会的サポート」とは?
社会的サポートには、いくつかの種類があります。今回の研究で参加者が語っていたのは、主に次のようなサポートでした。
- 情緒的サポート: 「頑張ってるね」といった励ましや共感。孤独感を和らげ、モチベーションを維持するのに役立ちます。
- 道具的サポート: 家族が健康的な食事を用意してくれたり、一緒に運動する時間を作ってくれたりといった具体的な手助け。
- 情報的サポート: 友人から新しいウォーキングコースを教えてもらうなど、役立つ情報の提供。
自分一人で抱え込まず、周りの人に目標を伝え、サポートをお願いしてみるのも有効な戦略です。
3. 「終わり」の後に「次」を考える
この研究で非常に興味深いのは、「プログラムは最高だった。続ける気になった。でも、終わってしまった」という参加者の声です。
12週間のプログラムという明確な目標とサポートがある間は高い意欲を維持できても、それが終わった途端に元の生活に戻ってしまう「燃え尽き」は、大きな課題です。
これを防ぐためには、目標達成後やイベント終了後を見据えて、あらかじめ次のステップを考えておくことが大切かもしれません。
- 一緒に頑張った仲間と、定期的に集まる約束をする。
- 次の小さな目標(例:少し長い距離のウォーキングイベントに参加する)を立てる。
- 新しい活動に挑戦してみる。
一つの区切りを「終わり」と捉えるのではなく、次のステージへの「移行期間」と捉え、継続的なつながりや目標を持つことが、長期的な習慣化につながりそうです。
【この研究の注意点】 この研究は、オーストラリアの特定のプログラムに参加した10名の男性の経験に基づいています。そのため、ここで得られた知見が、女性や他の国・文化の人々、異なる状況にあるすべての人に当てはまるとは限りません。
読後感
運動を続けるのに必要なのは、鉄のような意志だけではないのかもしれません。むしろ、楽しさや仲間、そして生活の中に溶け込ませる少しの工夫が、私たちを支えてくれるようです。
あなたにとって、運動を「楽しい」と感じられるのはどんな時ですか? また、誰かと一緒なら、あるいはどんな仕組みがあれば、無理なく続けられそうでしょうか?