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メンタルヘルス

感情にまかせた「やけ食い」、どうすれば?ダイビングとマインドフルネスの組み合わせがもたらす新しい可能性

📄 Efficacy of a combined diving and mindfulness program on emotional eating in adults with obesity: Randomised controlled trial with standard care.

✍️ Griffiths, K., Markarian, T., Meurice, V., Muzellec, M., Lannoy, F., Beneton, F., Michelet, P.

📅 論文公開: 2026年1月

感情的摂食 マインドフルネス 運動療法 肥満 ストレスケア

3つのポイント

  1. 1

    肥満に悩む成人を対象に、マインドフルネスとスキューバダイビングを組み合わせたプログラムの効果を検証しました。

  2. 2

    2ヶ月間のプログラム後、介入を受けたグループは食事や心理的サポートのみのグループに比べ、感情に任せて食べてしまう行動が有意に減少しました。

  3. 3

    この効果はプログラム終了から8ヶ月後まで持続し、ストレスや体重に対する自己否定感の改善も見られました。

論文プロフィール

  • 著者名 / 発表年: Griffiths, K. ら / 2026年
  • 調査対象: 肥満(BMI > 30 kg/m²)の成人63名
  • 調査内容: マインドフルネスとスキューバダイビングを組み合わせたプログラムが、ストレスなどから生じる「感情的摂食」に与える影響を検証。

エディターズ・ノート

ストレスや不安から、つい食べ過ぎてしまった経験はありませんか? この「感情的摂食」に、運動と心のケアを組み合わせるというユニークなアプローチで取り組んだ最新の研究をご紹介します。非日常的な体験が、私たちの心と体にどんな変化をもたらすのでしょうか。

実験デザイン

本研究は、科学的信頼性が高いとされる ランダム化比較試験 という手法で行われました。

フランス在住の肥満(BMI > 30)の成人63名を、無作為に2つのグループに分け、2ヶ月間の変化を比較しています。

  1. 介入群 (31名):

    • 通常の食事・心理サポート(標準ケア)
    • +マインドフルネスを取り入れたスキューバダイビングプログラム
  2. 対照群 (32名):

    • 通常の食事・心理サポート(標準ケア)のみ

研究チームは、プログラム開始から2ヶ月後、5ヶ月後、8ヶ月後に、感情的摂食の度合いを測る質問票(DEBQ-EE)を使って、両グループの変化を追跡しました。

その結果、2ヶ月の時点で、介入群は対照群に比べて感情的摂食のスコアが大幅に改善しました。この効果は、プログラム終了後8ヶ月たっても持続していたことが報告されています。

2ヶ月後の感情的摂食スコアの平均減少量。数値が大きいほど改善したことを示す。(出典: Griffiths, K, et al. 2026) 0 0 0 0 1 1 感情的摂食スコアの減少量 0.82 ダイビング&マインドフル ネス群 0.27 標準ケア群
2ヶ月後の感情的摂食スコアの平均減少量。数値が大きいほど改善したことを示す。(出典: Griffiths, K, et al. 2026)
項目 感情的摂食スコアの減少量
ダイビング&マインドフルネス群 0.82
標準ケア群 0.27
2ヶ月後の感情的摂食スコアの平均減少量。数値が大きいほど改善したことを示す。(出典: Griffiths, K, et al. 2026)
🔍 「感情的摂食」とは?

感情的摂食(Emotional Eating)とは、お腹が空いているからではなく、ストレス、不安、悲しみ、退屈といった感情的なきっかけで食事をしてしまう行動のことです。「やけ食い」や「むしゃくしゃ食い」もこれに含まれます。

感情を紛らわすための一時的な対処法ですが、長期的には罪悪感や自己嫌悪につながり、心身の健康に影響を与える可能性があります。この研究では、こうした食行動の改善を目指しました。

🔍 なぜ「ダイビング」と「マインドフルネス」なのか

研究チームは、この組み合わせの背景にある2つの要素を指摘しています。

  1. マインドフルネス: 「今、この瞬間」の自分の感覚や感情に、評価や判断をせずに注意を向ける心のトレーニングです。これにより、自分が何を感じ、なぜ食べたいのかを客観的に捉え、衝動的な行動を抑える助けになると考えられています。
  2. スキューバダイビング: 水中という非日常的な環境で、自分の呼吸に集中する必要があります。これはマインドフルネスの状態と非常に似ています。また、自然との一体感や無重力のような浮遊感は、心身をリラックスさせ、ストレスを軽減する効果が期待されます。

この2つを組み合わせることで、相乗効果が生まれるのではないか、というのが本研究の仮説です。

日常への活かし方

この研究から、感情的な食行動を改善するには、「身体活動」と「心理的なアプローチ」を組み合わせることが有効である可能性が示唆されました。

スキューバダイビングは誰もが気軽にできるものではありませんが、この研究の本質を私たちの生活に取り入れることはできそうです。

  1. 自然の中で、感覚を研ぎ澄ます運動を取り入れる ダイビングでなくても、例えば森林浴をしながらのウォーキングや、川のせせらぎを聞きながらのヨガなど、自然の中で五感を使いながら体を動かす時間を作ってみてはいかがでしょうか。都会の喧騒から離れるだけでも、良い気分転換になり、ストレスが和らぐかもしれません。
  2. 食事の時間を「マインドフル」に過ごす テレビやスマホを見ながらの「ながら食べ」をやめ、食事そのものに集中してみましょう。食材の色や形、香り、食感、そして味を一つひとつ丁寧に感じてみるのです。自分が「今、食べている」という事実に意識を向けることで、満足感が高まり、食べ過ぎを防ぐ助けになる可能性があります。
🔍 自分を責めないことの大切さ

この研究では、介入群で「体重に関する自己スティグマ(自己否定感)」が改善したことも報告されています。つい食べ過ぎてしまったときに、「またやってしまった」と自分を責めてしまうことは、さらなるストレスを生み、悪循環に陥りがちです。

大切なのは、そんな自分を否定せず、「今はストレスを感じているんだな」と客観的に受け止めることです。マインドフルネスは、そうした自己受容の態度を育む上でも役立つと考えられています。

もちろん、この研究は参加者の87%が女性であるなど、対象者が限られています。そのため、この結果がすべての人に同じように当てはまるとは限りません。

しかし、ストレスとの付き合い方や食事との向き合い方を見直すきっかけとして、非常に価値のある研究だと言えるでしょう。


読後感

ストレスを感じたとき、あなたは食べる以外の方法で、どのように自分の心をケアしていますか? この研究をヒントに、あなたに合った心と体のリフレッシュ方法を探してみてはいかがでしょうか。