膝の痛みを抱える高齢者の運動への恐怖心は、マインドフルネス認知療法で和らぐ可能性がある
📄 The Effect of Mindfulness-Based Cognitive Therapy on Kinesiophobia in Older Adults with Chronic Knee Osteoarthritis: A Randomized Controlled Trial.
✍️ Kheirkhah, Z, Fallahi, F, Sharifi, K, Asgarian, FS, Fallahi, AH
📅 論文公開: 2026年
運動への恐怖心は、療法を受けた群でより大きく下がった
- 1 変形性膝関節症の高齢者56人を、無作為に2群に分けて比べた
- 2 介入群の運動恐怖の点数は8週で29.46から25.68に下がった
- 3 通常ケア群も下がっており、差の大きさは慎重に読む必要がある
介入群の運動恐怖の点数(開始時→8週目)
論文プロフィール
- Kheirkhah らの研究で、2026年に Clinical Interventions in Aging に掲載されました。
- 対象は、イランのカシャーンの保健センターに通う、慢性の変形性膝関節症がある高齢者56人です。
- マインドフルネス認知療法(MBCT)が、運動への恐怖心(運動恐怖)を和らげるかを調べました。
エディターズ・ノート
膝が痛むと「歩いたら悪くなるのでは」という不安から、歩くことや運動を避けがちになります。体ではなく心の側から運動を続けやすくする方法を調べた研究として、取り上げました。
実験デザイン
この研究は ランダム化比較試験 ランダム化比較試験 参加者を無作為に介入群と対照群に割り付けて効果を比較する実験デザイン。エビデンスレベルが最も高い研究手法の一つ。 です。参加者56人を、くじ引きのような方法で次の2つの群に28人ずつ分けました。
| 群 | 内容 |
|---|---|
| 介入群 | 1回90分のマインドフルネス認知療法を全8回受ける |
| 対照群 | 通常のケアを受ける |
運動恐怖は、TSK-11という質問票の点数で測りました。点数が高いほど、運動への恐怖心が強いことを示します。測定は開始時、4週目(療法の終了直後)、8週目(終了から4週間後)の3回です。参加者全員が最後まで測定を受けました。
結果は次のとおりです。
| 群 | 開始時 | 8週目 |
|---|---|---|
| 介入群 | 29.46 ± 3.81 | 25.68 ± 3.22 |
| 対照群 | 28.64 ± 4.78 | 26.68 ± 5.15 |
介入群の平均点は29.46 → 25.68と下がりました。年齢、子どもの数、開始時の痛みの強さを考慮して分析すると、群と時間の組み合わせによる違い(交互作用)は統計的に意味のある水準でした(p = 0.040)。
| 項目 | TSK-11の平均点 |
|---|---|
| 介入群 開始時 | 29.46 |
| 介入群 8週目 | 25.68 |
| 対照群 開始時 | 28.64 |
| 対照群 8週目 | 26.68 |
🔍 マインドフルネス認知療法とは
マインドフルネス認知療法は、いまの自分の体の感覚や考えに、良い悪いの判断をせずに注意を向ける練習と、考え方の癖に気づく認知療法を組み合わせた方法です。
- 痛みそのものを消すことではなく、痛みへの不安や「運動すると悪化する」という思い込みとの付き合い方を変えることを目指します。
- もともとは、うつ病の再発予防のために作られた方法です。
🔍 この研究を読むときの注意点
- 参加者は56人と少なく、1つの地域の保健センターで行われた研究です。
- 対照群でも点数が下がっており、両群の差は大きくありません。
- 追跡は療法の終了から4週間後までで、より長い期間の影響は分かっていません。
- 抄録には、膝の痛みそのものや、実際の運動量がどう変わったかは書かれていません。
日常への活かし方
この研究を踏まえると、私たちの日常では次の点を意識すると良いかもしれません。
- 痛みへの不安に気づく。 歩く前に「また痛くなるかも」と考えていないか、気づくことから始められます。
- 体の感覚に注意を向ける時間を作る。 1日数分、呼吸や膝の感覚に意識を向け、感じたことを判断せずに眺める練習をしてみる方法があります。
- 運動を避け続けない。 恐怖心が和らぐと、医師や理学療法士が勧める運動を続けやすくなる可能性があります。
この結果がすべての人に当てはまるとは限りません。膝の痛みが強い方や急に悪化した方は、まず整形外科の医師に相談してください。
読後感
膝の痛みがある高齢者で、心の側からの働きかけが運動への恐怖心を和らげる可能性が示されました。
痛みがあるときに体を休めるか、少しずつでも歩くか。その判断に、不安がどのくらい影響しているでしょうか。